
中指、立ってますよ。
そのイメージを後続たちに強烈に植え付けたのは伝説のコメディアン、レニー・ブルース。「言論の自由」を武器にステージ上でタブーを無視して自分の好きなことを喋りまくり、何度も逮捕された男。その半生はダスティン・ホフマン主演で映画化もされています。
誰もが自分の思ったことを口にする自由。権利と言ってもいいのかもしれない。これは自由と民主主義を掲げる米国では国家理念の根幹にもなり得るテーマ。
しかし2009年2月現在、米のメディアで「FUCK!」と叫ぶことはできない。聞く人を不快にさせるという理由でメディアに言論規制がかかってい るのだ。ファックという言葉を口にするとそれだけで罰せられてしまうというもので、もしテレビやラジオなどのメディアでその言葉が放送された場合は政府 (FCC)が罰金を徴収できるようになった。言ってみればファック禁止令。この法令をめぐってドキュメンタリー映画も作られた。
その名もズバリ、『FUCK』。この映画、スクリーンに登場する面子がかなり面白い。まず顔馴染みなのはチャックDとアイスT。80年代後半に社会 への強い不満を表現した東西のラッパーたち。次に目を魅いたのは「ラスベガスをやっつけろ」の原作者ハンター・S・トンプソン。荒くれジャーナリズム。 ハードロッカーみたいな風貌と歯に衣着せぬ発言でアメリカ1の人気DJになったラジオDJ、ハワード・スターン。さらに2008年に他界した米スタンダッ プ・コメディ界の巨匠、ジョージ・カーリンへと続く。
そう、この映画はアメリカ政府と真っ向から戦ってきたアメリカ人の映画なのだ。自由の国の不自由な言論統制に対して、そのギャップ埋めるべく国と戦い続けてきたのが言葉を商売にするラッパー、作家、ラジオDJ、スタンダップ・コメディアンたちだった。
アメリカではこの映画の外でもコメディアンたちがサラッと政治に攻め込んでるのがクールに写る。口撃する相手がブッシュ政権だったりするともう、反ブッシュの僕には彼らが正義のヒーローにすら見えてくる。
邪悪な政治家と正義のお笑い芸人、そんな構図だ。
2008年の秋、サラ・ペイリンがあそこまで国民的なお笑いネタになってしまった陰には、過剰な物真似で人気を博したコメディアン、ティナ・フェイ の功績も大きいだろうし、証券マンみたいな風貌の辛口コメディアン、ビル・メイハーも大統領選では相変わらず好き勝手なことを言いまくって国民の溜飲を下 げるのに一役買っていた。
アメリカの政治にはお笑い芸人たちの辛口&毒舌なブレーキが必要なのだ。
でもそんなお笑い芸人たちの中にあって異彩を放っているのがスティーブン・コルベアという男。七三に分けた髪とインテリ風の眼鏡が真面目な印象を与えるヤサオトコ。なのに、言うことは言う。
この男の人生の大きな晴れ舞台は2006年、ホワイトハウスの晩餐会。3席隣に座るブッシュ大統領を褒め讃えるふりをしながらバカにし続けるという 高度にひねった笑いをやりきった。You Tubeには「コルベアがブッシュをロースト(じっくりこんがり焼く)する」というタイトルが付けられていた。見ていてこっちがドキドキした。靴を投げた 記者どころの話じゃない。目の前で大統領を能無しのバカ扱いし続けたんだから。10分以上も。政府の首脳が一同に会するホワイトハウスの晩餐会で!
これはその直後の映像。
YOU TUBE:
ブッシュの嫁、ローラがスピーチを終えたコルベアに言った言葉…「くたばりやがれ!」
ファーストレディはファックがお好きってね。
***************************************
アメリカのコメディアンたちは素知らぬ顔して政治の暗部にさえ切れ込んでみせる。
そのアティテュードは路上で反対抗議をしている人よりも、数段スマートに見える。

























